成瀬が感想を綴るブログ

様々な作品の感想を綴るだけのブログ。

『迷子』(劇団時間制作)

※一部ネタバレ表現があります。ご注意ください。

 

 

観た日:2020.11.25(Aチーム)

 

◯はじめに

・土曜日に生配信があります。見逃しもあります。

最高に好きな劇団さんなのでめっちゃ観てほしいです。土曜日に間に合わせたかったので夜更かしした。寝るまでは金曜だよ。

これブログの最後に書こうと思ってたけどネタバレばかりになってしまいそうだから最初に書いときます。観終わった後でまた読みに来てくれ。以下劇団時間制作さんTwitterより。

 

◯好きなところ

 ・セット役者演出音響以下略

前回公演『赤すぎて、黒』の時にめっちゃ書いた気がするから重複はなるべく避けます。あと今回は台本まだ買えてないから役名とか台詞とかあやふやです。

セットもやっぱり素敵。今まで見た公演のセットよりもなんか複雑な印象があったな。

あと幕開けまでずっと自然の音と言うか、音楽ではない音が流れてて、演劇が始まる以前から「家」という空間がそこにあるのが本当に好きなんですよね。

役者さんもやっぱり素敵だったなあ。一人一人書きたいのはやまやまなんですけど、時間も文字数もやばいことになりそうなので、数名を端的にまとめられたらいいな。

私桑野さんの2.5次元以外の作品観るの初めてな気がするんですけど、すごく、不安定な正義感の強さがめっちゃ良く表れてて好きでした。

武藤さんすごいなあ。最初の一言で観客が彼女のことを理解するって、凄いと思うんですよ。『ほしい』にも出演してらしたよね?あのイメージで観に行ったから、全然ちゃうくてめっちゃびっくりした。この作品の緊張感になる役を関西弁にしたのめっちゃ良いと思いました。「緊張感になる役」って表現があってるかわからんけど。

田名瀬さんも素敵なんですよね。比較的、その作品での希望を担うような役を演じてらっしゃることが多い印象があるんですけど、若くて、実直で、純粋で、真面目な、そういう役が本当にお似合いになるなあ。

やまうちさんの、思春期の女の子感が天才過ぎてすごいなと思いました。舞台上にはずっといるけど台詞が多いわけじゃないって役、めっちゃ難しいと思うんですよね。時間制作さんはセットの関係もあって、違う部屋にずっといるって人は多いと思う。でも、メインの部屋にいるけどあまりしゃべらないとか、起きている出来事には直接関わらないとか、そういう役どころめっちゃ難しい。それでも話は聞いてて、出来事は知ってて、その上でのお祭りの日の出来事じゃないですか。声の出し方も動き方もすごいなあ、と改めて思っていたら端的じゃなくなっていた。

素敵な役者さんがたくさんいるな。

 

・心はどこにあるのか

思えば最初からあったテーマですね。心はどこにあるのか。

心の値段はいくらなんだろうなあ。値段なんて付けられないものにいくら払ったところで、何も変わらないのに。

事故で家族を失った彼らが求めるのは失った家族の帰りだけなのに、彼らは裁判に勝ったところでお金を手に入れるしかできない。悲しいなって思うんだけど、しょうがないとしか言えない。失ったものは戻らないから。

失ってしまったらもう戻らないから、加藤母はアイリを抱きしめたんだよなあ。「私やっぱり死ねばよかった?」って、そう言うアイリのことを見て、芦沢母は、揺らいだんだと思うんだ。

彼女が首を吊ったことを聞いて弁護士さんは「どこで間違えたんだ」って言ってたけど、あえて正誤をつけるなら、遺族に感情が揺らいだ時点で間違ってると思うんだよね。失った人のことばかりを考えていて、これから失うかもしれない人々のことを考えてない。

心は移動すると思う。自分の中だけじゃ抑えきれなくなった心は、他人にも飛んでいくんじゃないかな。全部、全部そう。全部そうなんだよ。じわじわと周囲に広がっていく。

そんな中で、ずっとこの家にはいなかった教え子二人と帰国した兄が入ってくる。さっきの、「どこで間違えたのか」という話を「なぜ彼女が首を吊ったのか」に置き換えるなら、きっかけはやっぱりこの3人だよね。

編み物をしていただけの彼女が誰なのかがわかったシーン、すごかったなあ。検事の彼女が「私知らなくて…」て言ったのが、めっちゃ自然というか。そうだよね察するよね、みたいな。素敵やなあ。

んでマキちゃんが思い出話を始めたところで、真っ先にビールを渡して話を聞いてた彼。竹石さんは本当にこういう役が似合うなあ…アイリがいろいろ話して部屋に戻ろうとしたところを、さりげなく止める感じとかもさ、素敵やったなあ。

そこからじんわりと周りもそういう話を始めて、なんか、久しぶりなんだろうなって思った。ようやく、彼らの時間が動き出したんだって。むしろずっと止まってたんだなって、ようやく理解したというか。

吹っ切れて、動き出して、ようやくってところでお母さんの心に自分がいることを知らされて。「どこに行けばいいの」と呟いた彼女は、本当に迷子でさ。動けない、止まれない。どうすればいいかわからない。

そういう中で、お母さんが首を吊った。

何もわからないよなあ。私の心を迷子にしたままで、勝手にいってしまうんだもの。

最後のマキちゃんのシーン。段々と子供っぽい泣き方になっていって、お母さん、お父さん、と呼ぶ声が、とてもつらくて苦しかったな。

心はどこにあるのか。やっぱり、どこにもないのかもしれない。

 

◯あんまり好きじゃないところ

・役者さんの声の通り具合

役者としてやばい声量とかでは全くなくて、本当に皆さん声が良く通るなあ素敵だなあと思っていたのだけど、あえて言うなら声の通り具合に多少の差があったかなと思います。それに伴う台詞の不明瞭さもちょっと気になったかな。

私は運の良いことにドセンの席で観劇させていただいたんですが、ぼそっとつぶやくような台詞が後ろの方だと聞こえなさそうだなあって方もいました。逆に声がめっちゃ通る方とか、広めの劇場に慣れてるんだろうなって方とかは一番後ろでもしっかり聞こえるだろうなって感じだったので、その幅がちょっと気になったかも。

もちろん人体なので差があるのは当たり前だし、現代劇をリアルに描いているということを考えれば呟くような台詞で意識して声張りすぎるのも違うと思うんだけど、そのせいで台詞が聞き取れないとか話に集中できないとかだとめっちゃもったいない。と、思いました。

 

・今までより泣かなかったなあ。

良い悪いとか好き嫌いとかじゃなくて、「想像より泣かなかった」だけなんですけど、感想として書いときます。

今回は過去の作品よりも、悪の比重が誰に偏ってるかがわかりやすかったかなあ。

だからこそ、やるせなさが前よりも少なくて(今までに比べると)泣かなかったのかもしれない。それでも全然泣きはしたんですけど…マスク外せないからびっしゃびしゃにはならなくてむしろ良かったのかも。

時間制作さんの作品は今回含めて3作観劇したけど、構成としては『ほしい』に似てるなあと思ったんですよね。後半に入ってもうこれ以上つらいことはないだろう、と何回も思うんだけど、どれも裏切られてまだあるのか、と思う。

でも『ほしい』ほどの、どうしようもなさはなかった気がするんだよな。

どうしようもないよ、どうしようもないんだと思う。むしろ『ほしい』がどうしようもなさすぎたから、『迷子』がマシに感じるのかもしれない。

そういう意味では、まだ観やすい作品なのかなとも思ったんですよね。わかりやすいとも言えるというか。

でもこれが時間制作さんで初めて触れる作品だったら、ここまで強烈に惹かれていたかと聞かれると微妙だなあと思ったりした。でもこれは私が既に数作品観たうえで思っていることだから、やっぱりこれが初めての時間制作だとしても惹かれたのかもしれない。わからん。「初めての時間制作」ってなんだよ。

全部の記憶を消して『迷子』で時間制作さん初観劇をしてみたい。

現場からは以上です。

 

◯おわりに

・正しさだけで解決する問題はどこにもないのかもしれない

どちらも正義だから争いが生まれるのだし、どちらも正しさを求めるから戦争が起こるんだとずっと思っているのです。だからこそ、法律があるんだろうなと思うんですよ。法律が正しいわけじゃない。だけど、法律によって正しさを決めないと世界から人はいなくなるんだよ。きっと。

やっぱり時間制作さんめっちゃ好きです。キャストさんのカテコなかったから直接拍手を送れなかったのが残念だけど、谷さんに思いの丈を全部(拍手を通して)送ったので届いてたらいいな!!!