成瀬が感想を綴るブログ

様々な作品の感想を綴るだけのブログ。

『重力ピエロ』(伊坂幸太郎/新潮文庫)

※一部ネタバレ表現があります。ご注意ください。

 

読んだ日:2021.1.22

 

 

◯はじめに

作家買いしたくなった

伊坂幸太郎さんは中学の頃に『死神の精度』『死神の浮力』を読んだきりだったけど、こんなに洒落た作品書く方だったんだなあ。

1冊を読んだだけで様々な映画や音楽や小説を知ることができる作品は、少し得をした気分になるので読み終わった後の充足感が良い。これらを自分の作品に組み込めるだけの知識があるというのも素敵。他の作品も読んでみたいなあ。

 

◯好きなところ

・「家族」とミステリー

読み進めていくうちに謎がどんどん解けていって、ミステリーとしてもとても楽しめた。最初に敷かれていた伏線が徐々に回収されていく部分もあれば、急にパッと真実が明かされる部分もあって、その度にあの叙述はそういうことか、あの発言はそういうことかと気持ちの良い納得感があった。素敵。

グラフィックアートと放火事件、たまたまアミノ酸で繋がった事柄も、フィクションの中では偶然でも作家は意図して作っているわけで、なんてことだと思いました。

この作品で重要になる「家族」というテーマだけど、それを「家族の絆」とか「感動の結末」とか綺麗な言葉で表現するのはなんだか違うなと思うのよな。私の価値観として、悪事それ自体を美しい言葉で飾って正当化するのは好きじゃないのだけど、それでもこの作品の「家族」はとても素敵だなと思った。

表現が難しいな。絆を感じられたとか、血の繋がりは関係ないとか、感動したとか、そんな言葉で表現するとこの作品の魅力が急になくなってしまう気がする。そんな一言で表すのは、春の十年以上には不釣り合いだ。だけど、そういう一言で表されたほうが、あの複雑な家族は幸せなのかもしれない。

ハッピーエンドに見えても本質は救いのない作品が好きなので、そういう意味でとても私向けな作品だなと思いました。

 

・キャラクターが素敵

諧謔やブリティッシュ・ジョーク的なものを扱うキャラクターにどうしようもなく惹かれてしまう。どうやら伊坂作品にはこういったキャラクターがよく出てくるらしいので、とりあえず気になる作品を集めてみたい。

遺伝子という超科学的な、それでいて超自然的な分野と、生殖、繋がり、死。

執着しているようで、執着していなくて、けれど執着的なまでに追い求めあるいは巻き込む。

泉水と春の会話がとても楽しくて、おもしろいんだ。彼らに影響を与えている両親の会話も楽しくて、会話文が楽しい小説というのはとても良いものですね。

謎の美人も、優秀な探偵も、クセしかなくて最高。葛城てめえは駄目だ。

 

・センスが良い

この小説のタイトルに『重力ピエロ』と付けたのも、小見出しのようなそれぞれの単語も、ただただセンスが良いなと思いました。この作品の中で様々な単語や事象が出てくるけれど、その中で『重力ピエロ』なんだなと。良い。

あと小説の、見え方を意識して文章を書いているところもお洒落だなと思って。それをしているしていないで小説のおもしろさへの影響は特にない(と私は思う)のだけど、それはそれとして小説を文字の羅列ではなく「観るもの」としても意識している。もしかしたら意識してではないのかもしれないけれど、結果的に読者が目を惹きつけられる表現になっていて、そういうの好きです。

前半出てきた単語をそれとは違う意味として後半に出してくる。オタクが好きなやつじゃん…と唸らずにはいられなかった。

最初は本屋で冒頭数ページ読んで、男女間での暴力の描写は痛くて苦手だからやめとこうかなとも思ったのだけど、あの時心の隅に湧いた興味に従ってレジに持って行った自分を褒めてあげたい。良い小説を買ったぞ。

 

◯あんまり好きじゃないところ

・宣伝文句というか

重複なのだが、この作品を綺麗な言葉で表現するのはやっぱり相応しくないと思う。けれど新潮文庫のあらすじには「感動」という言葉が用いられていて、なんだか好きじゃないなと思いました。

たぶん私が購入を躊躇した理由のひとつでもあると思うんだよ。感動の物語は求めていないんだよな、と。どちらかというと伊坂幸太郎公式HPのあらすじ(https://isakakotaro.ctbctb.com/books/%25e9%2587%258d%25e5%258a%259b%25e3%2583%2594%25e3%2582%25a8%25e3%2583%25ad/)のほうがぴったりですね。著者のHPなのだから当たり前と言えば当たり前だが。

 

インパクトが少なかったような

良い悪いではないし「好きじゃない」と言うほどでもないのでここに書くべきではないのかもしれないけれど、この作品から強烈なインパクトを与えられたか、と訊かれるとうーんと思ってしまう。これを原作にした連続ドラマを作ったら人気が出そうだな、と思ったので、そういう意味ではエンタメ的だという印象かな。

どちらかと言えば普段あまり小説を読まない人の方が、伊坂幸太郎作品はオススメなのかもしれないなと思いました。

むしろ読みやすさを意識して書いているのかもしれないな。よく名前を聞く作家さんだし、ということは万人受けもしているのだろうという勝手なイメージ。

わからない。比較的よく小説を読む私の感じる「普段読まない人も読みやすそう」なので、そう言うなら読んでみよう、と普段読まない人が読んだら読みにくいのかもしれない。おもしろさは間違いないので興味があれば是非。

 

◯おわりに

・目には目を 歯には歯を

この理論なら命には命をもって償うべきなのに、1人の(場合によっては複数の)命を奪っても奪った側は奪われないのが現実。ずっと疑ったことなんてなかったけど、この小説を読み終わった後には酷くこの現実が信じられなくなってしまった。

消えた命は生きている命よりも軽くなってしまうのか。未来がないから。

法律ってなんだろうな、なんてことを考えたのでした。良い作品を読んだ。

 

 

『迷子』(劇団時間制作)

※一部ネタバレ表現があります。ご注意ください。

 

 

観た日:2020.11.25(Aチーム)

 

◯はじめに

・土曜日に生配信があります。見逃しもあります。

最高に好きな劇団さんなのでめっちゃ観てほしいです。土曜日に間に合わせたかったので夜更かしした。寝るまでは金曜だよ。

これブログの最後に書こうと思ってたけどネタバレばかりになってしまいそうだから最初に書いときます。観終わった後でまた読みに来てくれ。以下劇団時間制作さんTwitterより。

 

◯好きなところ

 ・セット役者演出音響以下略

前回公演『赤すぎて、黒』の時にめっちゃ書いた気がするから重複はなるべく避けます。あと今回は台本まだ買えてないから役名とか台詞とかあやふやです。

セットもやっぱり素敵。今まで見た公演のセットよりもなんか複雑な印象があったな。

あと幕開けまでずっと自然の音と言うか、音楽ではない音が流れてて、演劇が始まる以前から「家」という空間がそこにあるのが本当に好きなんですよね。

役者さんもやっぱり素敵だったなあ。一人一人書きたいのはやまやまなんですけど、時間も文字数もやばいことになりそうなので、数名を端的にまとめられたらいいな。

私桑野さんの2.5次元以外の作品観るの初めてな気がするんですけど、すごく、不安定な正義感の強さがめっちゃ良く表れてて好きでした。

武藤さんすごいなあ。最初の一言で観客が彼女のことを理解するって、凄いと思うんですよ。『ほしい』にも出演してらしたよね?あのイメージで観に行ったから、全然ちゃうくてめっちゃびっくりした。この作品の緊張感になる役を関西弁にしたのめっちゃ良いと思いました。「緊張感になる役」って表現があってるかわからんけど。

田名瀬さんも素敵なんですよね。比較的、その作品での希望を担うような役を演じてらっしゃることが多い印象があるんですけど、若くて、実直で、純粋で、真面目な、そういう役が本当にお似合いになるなあ。

やまうちさんの、思春期の女の子感が天才過ぎてすごいなと思いました。舞台上にはずっといるけど台詞が多いわけじゃないって役、めっちゃ難しいと思うんですよね。時間制作さんはセットの関係もあって、違う部屋にずっといるって人は多いと思う。でも、メインの部屋にいるけどあまりしゃべらないとか、起きている出来事には直接関わらないとか、そういう役どころめっちゃ難しい。それでも話は聞いてて、出来事は知ってて、その上でのお祭りの日の出来事じゃないですか。声の出し方も動き方もすごいなあ、と改めて思っていたら端的じゃなくなっていた。

素敵な役者さんがたくさんいるな。

 

・心はどこにあるのか

思えば最初からあったテーマですね。心はどこにあるのか。

心の値段はいくらなんだろうなあ。値段なんて付けられないものにいくら払ったところで、何も変わらないのに。

事故で家族を失った彼らが求めるのは失った家族の帰りだけなのに、彼らは裁判に勝ったところでお金を手に入れるしかできない。悲しいなって思うんだけど、しょうがないとしか言えない。失ったものは戻らないから。

失ってしまったらもう戻らないから、加藤母はアイリを抱きしめたんだよなあ。「私やっぱり死ねばよかった?」って、そう言うアイリのことを見て、芦沢母は、揺らいだんだと思うんだ。

彼女が首を吊ったことを聞いて弁護士さんは「どこで間違えたんだ」って言ってたけど、あえて正誤をつけるなら、遺族に感情が揺らいだ時点で間違ってると思うんだよね。失った人のことばかりを考えていて、これから失うかもしれない人々のことを考えてない。

心は移動すると思う。自分の中だけじゃ抑えきれなくなった心は、他人にも飛んでいくんじゃないかな。全部、全部そう。全部そうなんだよ。じわじわと周囲に広がっていく。

そんな中で、ずっとこの家にはいなかった教え子二人と帰国した兄が入ってくる。さっきの、「どこで間違えたのか」という話を「なぜ彼女が首を吊ったのか」に置き換えるなら、きっかけはやっぱりこの3人だよね。

編み物をしていただけの彼女が誰なのかがわかったシーン、すごかったなあ。検事の彼女が「私知らなくて…」て言ったのが、めっちゃ自然というか。そうだよね察するよね、みたいな。素敵やなあ。

んでマキちゃんが思い出話を始めたところで、真っ先にビールを渡して話を聞いてた彼。竹石さんは本当にこういう役が似合うなあ…アイリがいろいろ話して部屋に戻ろうとしたところを、さりげなく止める感じとかもさ、素敵やったなあ。

そこからじんわりと周りもそういう話を始めて、なんか、久しぶりなんだろうなって思った。ようやく、彼らの時間が動き出したんだって。むしろずっと止まってたんだなって、ようやく理解したというか。

吹っ切れて、動き出して、ようやくってところでお母さんの心に自分がいることを知らされて。「どこに行けばいいの」と呟いた彼女は、本当に迷子でさ。動けない、止まれない。どうすればいいかわからない。

そういう中で、お母さんが首を吊った。

何もわからないよなあ。私の心を迷子にしたままで、勝手にいってしまうんだもの。

最後のマキちゃんのシーン。段々と子供っぽい泣き方になっていって、お母さん、お父さん、と呼ぶ声が、とてもつらくて苦しかったな。

心はどこにあるのか。やっぱり、どこにもないのかもしれない。

 

◯あんまり好きじゃないところ

・役者さんの声の通り具合

役者としてやばい声量とかでは全くなくて、本当に皆さん声が良く通るなあ素敵だなあと思っていたのだけど、あえて言うなら声の通り具合に多少の差があったかなと思います。それに伴う台詞の不明瞭さもちょっと気になったかな。

私は運の良いことにドセンの席で観劇させていただいたんですが、ぼそっとつぶやくような台詞が後ろの方だと聞こえなさそうだなあって方もいました。逆に声がめっちゃ通る方とか、広めの劇場に慣れてるんだろうなって方とかは一番後ろでもしっかり聞こえるだろうなって感じだったので、その幅がちょっと気になったかも。

もちろん人体なので差があるのは当たり前だし、現代劇をリアルに描いているということを考えれば呟くような台詞で意識して声張りすぎるのも違うと思うんだけど、そのせいで台詞が聞き取れないとか話に集中できないとかだとめっちゃもったいない。と、思いました。

 

・今までより泣かなかったなあ。

良い悪いとか好き嫌いとかじゃなくて、「想像より泣かなかった」だけなんですけど、感想として書いときます。

今回は過去の作品よりも、悪の比重が誰に偏ってるかがわかりやすかったかなあ。

だからこそ、やるせなさが前よりも少なくて(今までに比べると)泣かなかったのかもしれない。それでも全然泣きはしたんですけど…マスク外せないからびっしゃびしゃにはならなくてむしろ良かったのかも。

時間制作さんの作品は今回含めて3作観劇したけど、構成としては『ほしい』に似てるなあと思ったんですよね。後半に入ってもうこれ以上つらいことはないだろう、と何回も思うんだけど、どれも裏切られてまだあるのか、と思う。

でも『ほしい』ほどの、どうしようもなさはなかった気がするんだよな。

どうしようもないよ、どうしようもないんだと思う。むしろ『ほしい』がどうしようもなさすぎたから、『迷子』がマシに感じるのかもしれない。

そういう意味では、まだ観やすい作品なのかなとも思ったんですよね。わかりやすいとも言えるというか。

でもこれが時間制作さんで初めて触れる作品だったら、ここまで強烈に惹かれていたかと聞かれると微妙だなあと思ったりした。でもこれは私が既に数作品観たうえで思っていることだから、やっぱりこれが初めての時間制作だとしても惹かれたのかもしれない。わからん。「初めての時間制作」ってなんだよ。

全部の記憶を消して『迷子』で時間制作さん初観劇をしてみたい。

現場からは以上です。

 

◯おわりに

・正しさだけで解決する問題はどこにもないのかもしれない

どちらも正義だから争いが生まれるのだし、どちらも正しさを求めるから戦争が起こるんだとずっと思っているのです。だからこそ、法律があるんだろうなと思うんですよ。法律が正しいわけじゃない。だけど、法律によって正しさを決めないと世界から人はいなくなるんだよ。きっと。

やっぱり時間制作さんめっちゃ好きです。キャストさんのカテコなかったから直接拍手を送れなかったのが残念だけど、谷さんに思いの丈を全部(拍手を通して)送ったので届いてたらいいな!!!

 

 

『461個のおべんとう』(2020年)

※ネタバレ表現があります。ご注意ください。

 

 

観た日:2020.11.17

 

◯はじめに

・エンディング曲がずっと頭から離れない

映画観て初めて聴いたはずなのに、映画館出た時からずっと脳内ループしてるし、たまに口ずさんじゃう。

二人ともが主旋律みたいな感じでめっちゃ好きでした。道枝さんのパート覚えたいなあ。歌うの楽しそう。男性で出すのはきついのかもしれないけど。

 

◯好きなところ

・お弁当のお話

劇中に「これはお弁当の話だ。それ以上でも、以下でもない。」とかってナレーションがあって、もうこの言葉に尽きるなと思った。高校3年間お弁当を作る父親と、高校3年間を過ごす息子の話。

よく想像しがちなのが、お弁当を通じて気持ちが伝わるとか、何か深い思い出のあるおかずが入ってて感動みたいな。なんか、そういうんじゃないなと思って。

本当にお弁当を作ってて、それを食べてて、それだけって感じがとても良かった。

おそらくその雰囲気が揺るがない理由は、井ノ原さんが演じる父親なんだよね。何か深い意味があるわけじゃなくて、ただお弁当を作る。外的な何かに強制されてるわけでもなく、むしろ息子も別に作んなくていいよとか言ってるのに、それでも作る。ベロベロになって帰ってきても作る。その自分勝手さがすごく好きで。

ふわふわしててふらふらしてて、何かに縛られるのが好きじゃないんだろうなって思うんだよね。でも自分の中で決めたことを、自分の芯にしたものを、周りに強制するわけじゃないというか、自分の中で決めてやってる。俺が好きでやってるんだ、みたいな。あくまで周りが合わせてるだけだなって思ってさ。

もちろんそれが良いというわけじゃなくて、彼を「良い父親」だと思うかと聞かれたら特別そうとは思わないけど、そういうところが好きだなって思った。

エッセイ作品の良さを消してないというか。美談にしてないというか。もちろん装飾してる部分もあるとは思うんだけどさ。エンターテインメントとして成り立たせるためにね。

この親子(あくまで劇中の2人)はこれからも喧嘩したりすれ違ったりすると思うんだけど、たぶん将来、幸せだなと笑い合うんじゃないかなあと思った。素敵ね。

 

・細かいところが好きだなあ

細かいところばっか好きになりがちなんだよな。微妙な構図とか演出とか声の出し方とかで、単純なそのシーンその会話以上の意味合いを持たせてるような作品が好きなんですけど。

それは置いといて、やっぱ目玉って言っていいのかわからんけど、虹輝が孤独を感じて学校を休んで、家でお弁当食べるまでのシーンがさ。めっちゃ良かったなあ。

一樹は別に何か察していたわけじゃなくて、いつも通りお弁当を作っただけなんだよね。その"いつも通り"が虹輝には刺さったんだろうなあ。

周りより1つ年上で、疎外感があって、友達って呼べる同級生もできたけど、やっぱり年齢の差はあって。当時の1歳差(1学年差)って結構なものじゃん。既に同い年と1つ差ができてるのに、これ以上広げたくない。父親は自由奔放だし、母親は違う人間関係を作っているし、迷惑もかけたくない。父親みたいな人にもなりたくない。いろんな気持ちがあって、焦ってて、つい言葉が口から飛び出しちゃって。言いたくないことだったし傷つけたこともわかってるけど、じゃあどうしたらいいんだよって。どうすればいいんだよって思いもあって。合わせる顔もないまま学校休んで、約束破っちゃったなとか思ってさ。母親にも弱音吐けなくて、自分は本当に一人なんじゃないかって思って。それで家に帰ると、おべんとうが朝のまんま置いてあるんだよ。いつも通り。卵焼きが入ってて。ミニトマトが入ってて。いつも通りの味がした。

大好きだなこのシーン…大好きだな…

それで、そのあとの卵焼きのシーンね。ヒロミと章雄はおいしい!って言ってるからたぶん父親が作るのと似てるんだと思うのよ。それか父親が真似て作ってるのか。でも虹輝はなんか違う、みたいな顔してて。好きだなあ。あとヒロミと章雄がさあ…めっちゃ良かった…森七菜さんは他の作品でも結構お見掛けしてたんだけど、若林さんめっちゃ良いな…いるよねこういう男子高校生、みたいな。ほんと良かった。

 

◯あんまり好きじゃないところ

・本編のラスト

エンディング流れる前の映像、めっちゃブツッと終わったんだよなあ。あんまり好きじゃなかった。でもエッセイの終わりというか、これから先はない、みたいな演出としては良いのかもしれない。わからんけど。どっちにしろあんまり好きじゃなかったなあ。

 

◯おわりに

・何より井ノ原さんが最高

ゆるっとした雰囲気が最高でしたね。道枝さんと親子っていうのはあまり想像つかなかったけど、目元とかよく見ると似てるんだなあと思いました。

みっちーーーーーー!!!!がんばれ!!!!!標準語難しそうやったなあ。ライブの曲によって雰囲気がめっちゃ変わるアイドルってイメージなので、経験積んで歳も重ねればとても良い役者さんになると思うんだあ。応援してます。

 

 

『窮鼠はチーズの夢を見る』(2020年)

※ネタバレ表現があります。ご注意ください。

 

観た日:2020.10.11

 

 

◯はじめに

・想像以上に濡れ場が多い

最初の濡れ場で周りがめっちゃざわついて面白かった。

これR-15なんだな……R-18でもいい気がするけど、モロじゃないからかな。

原作未読です。以下綴る内容には、原作の中の表現を踏襲したものも多くあると思いますが、あくまで映画を観た感想として述べますね。

 

◯好きなところ

成田凌とかいう役者

なにあれ?(?)

決して表情が大きく変わる役じゃないのに、視線の向きとか動かし方とか、目元の筋肉の緊張とか、口元も軽く口角上げたりちょっとキュッとすぼめたりするぐらいしかしないのに、表情だけが抜かれてるシーンでも、動揺怒り喜び悲しみ全部感じ取れた。なに。すごいなあ。

あと、前にたまたま見たインタビューで、「目元が濡れてる感じを意識した」っておっしゃってたのだけど、めっちゃわかった。濡れてた。作品自体が全体的に湿度高めでしっとりしてるんだけど、今ヶ瀬の瞳が濡れてなかったらもっとさっぱりした印象になりそう。

主人公は恭一だとしても、作品の中心にいるのは今ヶ瀬だなあと思った。

 

・恭一のクズっぷりが素敵

もともと大倉くんのジャニウェブ読んで興味持ったのだけど、まさかここまでクズな役だとは思ってなかった。

目に見えてというか、100人が100人クズだっていう印象を抱くかどうかは微妙、みたいな地味なクズっぷり(?)が一貫してたなという印象。

自分のことしか頭になくて、愛されたいと思っていて、愛してくれる人が好きで、それが当たり前だと思っている。とことんクズなんだなあと思った。

カーテン届いたの先週って言ったあたりがすごく好きでした。心が離れ始めてるってのもあったとは思うけど、それにしても言うんだ……みたいな。直接的な誤魔化し(浮気疑われてるから出かけて機嫌とろう、とか)はしても、こういう細かいところは雑よな、と思う。

あと北京ダック食べに行くシーンで、なんか楽し気に肩組んでたのに女性二人とすれ違ってなんか見られてそう、って思ったときにスッと腕外すのがめっちゃさりげなくて、だからこそリアルで、作りこみが細けえ!!!!と思った。

エンディングも、恭一だけが1人でちょっとスッキリしてるんだよな。いろんな人を悲しませたことは頭にないみたいに。頭の中は覗けんから実際のところは知らんけどさ。

結局今ヶ瀬が「戻ってくる」ことを待つんだよね恭一は。自分から会いにとか、探しにとか、自分から行動は起こさない。今ヶ瀬が姿を消した理由を考えないで。今ヶ瀬の愛を信じて疑わないくせに、今ヶ瀬の愛を知ろうとはしない。自分勝手な人だよなあ。

まああの後今ヶ瀬も戻ってきそうではあるけどね。

恭一は本当に、1人で勝手に苦しんでいるだけなんだな。そんで1人で勝手にスッキリする。とても、人間味のあるキャラクターだなと思いました。

ただ彼の名誉のために言うと(?)、恋愛面以外での恭一は結構しっかりしたというか、頼りがいがあって周りに好かれる人なんだろうなと思いました。「(今ヶ瀬が)傷つくところを見たくない」というのも、彼(ら)に向けられる偏見が嫌だという気持ちありきなのだろうし。それが今ヶ瀬と関係を持ったから、なのかはわからんけど。

まあそのわりには「普通の男」って連発するからどっちにしろなのかもしれん。

 

・伏線回収と言うか、過去との対比というか

表現が難しい!!!!!

一番わかりやすいのは、最初の寿司屋で「普通の男なら~」みたいなセリフがあって、そのあと夏生さんと三つ巴のところで「普通の男には無理だよ」みたいなセリフがあったの。うわーーーーーーと思った(急に低下する語彙力)。

あと個人的にようできてる、と思ったのが濡れ場での上下(上下?体位?)。最初は今ヶ瀬が上で求めてたのが、後半の濡れ場は恭一が上になって求めてたんだよね。それが、実際の心の動きと言うか、最初は今ヶ瀬のほうが恭一のことを好きでグイグイいってたのが、だんだん恭一が今ヶ瀬から離れがたくなってる、みたいな。うまいこと表してんな~~~と思って好きでした。

あと考察がはかどると思ったシーンが、たまきちゃんが恭一のスウェット着てカウンターチェア座ったときに、自分のところに呼んで降りさせたところ。

あそこで今ヶ瀬の存在がよぎったのは視聴者側としても理解できるところだけど、それがどのような感情でよぎったのかによってだいぶ変わるなと思って。

例えば、たまきちゃんが今ヶ瀬と同じ行動を取ることによって、今ヶ瀬のことを思い出してしまうのが嫌だったのか、あるいは「その行動を取っていた人物」として記憶に残るのが今ヶ瀬じゃなくなってしまうのが嫌だったのか。今ヶ瀬の場所を残しておきたかったのか。どっちなのかによってだいぶ変わると思うんだな。もちろん両方の思いが複雑に絡んだ結果かもしれないけど。

なんか、そういう過去のシーンとの対比みたいなのが個人的にものすごく好きです。

 

・全体的に美術とか演出とか本当に好みでした

映画観てる時に美術とかセットとかって(そういうの詳しくないのもあって)あんまり注目してなかったんだけど、最近色彩検定の勉強始めたからなのか色味とか部屋の中とかすごく気になっちゃった。とても素敵でした。

特に今ヶ瀬と恭一の部屋の対比が色味でも置いてるものでも強調されてて。

今ヶ瀬の部屋は暖色系の暗めのライトで、植物とか木でできた感じの机と椅子みたいな(細かいとこ覚えてないからなんとなくの雰囲気)、全体的にウッディでエキゾチックな、湿度高めな雰囲気の部屋だった。

対して恭一の部屋は、コンクリ打ちっぱなしで色味が少なくて無機質な感じ。思えば唯一暖色で木っぽさがあったのがカウンターチェアだなあ。たぶん。そこも意識してたのならとてもすごい。

いろんなところで作りこまれてるなって感じる作品だったなあ。それが厭味ったらしいわけでも鬱陶しいわけでもなく、自然。素敵。今思い返しても好きなのが三つ巴の時のビールですね。良かった。にやけちゃった。

 

・女性のキャスティングも良かった

知佳子さんとかたまきちゃんとか、「恭一の好み」がわかりやすいキャスティングをされてて、だからこそ夏生さんがちょっと異質なんだよね。たぶん原作を踏まえているのだと思いたいんだけど、夏生さんはそこまで恭一のタイプって感じがしなくて。いろいろ想像が膨らんでおもしろかった。

 

◯あんまり好きじゃないところ

ステレオタイプなゲイ像がな~

恭一がクラブ行ったときに、カウンターとかでお酒飲みながら話してた人たちが全員ステレオタイプ!て感じがしてどうなんだろうと思ったりとか。いやでもそういうとこ行ったことないし実際あんな感じなのかもしれないけど、それにしてもカメラがどこに向いても同じだなあって。まあ大学生もみんな同じような感じだもんな…そういうことかな…(違)

ただ奥で踊ってた人とか、恭一にハンカチ差し出した人とかはまたちょっと違ってて、ん~~~~て感じ。んん、わからん。ただあんまり好きなものではなかったです。

 

・「なんだそれ」多ない?

なんかどっかのシーンで恭一がめっちゃ「なんだそれ」「なんだよそれ」って言うなーと思って意識して聞いてたんだけど、十数分ぐらいのシーンで5回ぐらい言ってた気がする。ちょっと盛ったけど。体感そんな感じ(?)。

そういう返し(似たような返し)ばっかりする、という一種のキャラ付けというか、そういうのなのかな。恭一の中でいくつかの「相槌パターン」があって、その中から選んで会話してる、みたいな。基本他人に興味がないから、どんな話だとしても一定の返事をする、みたいな。そう考えると面白いんだけど、観てる最中はめっちゃ言うなーって思ってました。

 

 

◯おわりに

・1時間のドラマ1クール分ぐらいの密度

いやほんと観終わった後に、あれ、ドラマ観てたのかな?一挙放送かな?みたいな気持ちになった。びっくりしちゃった。

時系列というか、展開は結構速くポンポンと進んでいくのだけど、全体的な雰囲気としては疾走感とかよりも断然ゆったりしっとり生々しい、みたいな感じなので、「いや急に時間飛ぶやん」みたいな気持ちにもならずに気が付けば遠い場所に来てる。(?)

映画としてもちょっと長めなのかな。わからんけど。でもほんとにぎゅっとしてて、でも内容が薄く感じることもなくて、本当に濃密な時間でした。

タイトル聞いた段階では、なんとなく窮鼠は今ヶ瀬かな、と思っていたのだけど、窮鼠は恭一のことなのかもな。いや、ふたりともを指してるのかも。

いやーーーーー映画には関係ないことなんだけど、観る直前にいろいろあって、でもチケット先に買ってたから観る以外選択肢はなくて、やっぱ買わなきゃよかったかなーーーとか思ってたのだけど、観てよかったわ。本当に。素敵な作品でした。

 

 

 

 

 

 

あとこれ見かける度に言うことにするけど、上映中はスマホの電源切ろうな。マナーモードでも音めっちゃ聞こえるからな。やべ!と思ったのか純粋に通知気になったのかそのあとスマホ開いてたよな。目の端に見えたからな。気が散るんだわ。やめてな。映画館は家じゃないからな。

あとエンドロール直前ぐらいでスマホ見てた人もいたな。やめてな。エンドロールの時もやめてな。興味ないなら先に外出なな。端に座ってりゃそそくさと出られるでしょう。マナー守ろうな。

 

 

『青くて痛くて脆い』(2020年)

※ネタバレ表現があります。ご注意ください。

 

観た日:2020.9.8

 

 

◯はじめに

・以下は原作ファンの感想である

もともと原作が好きで、映画化が発表された時から楽しみでした。主要キャストさんも信頼しかなくて、原作が好きな作品の二次創作物には基本関わらないようにしているのだけど、これは観るしかないじゃんって思ってました。ちなみに『君の膵臓を食べたい』は原作好きゆえ映画観てない。

 

 

◯好きなところ

・安心安定のキャスト陣

杉咲花さんが好きなんですよ(唐突)。好きな女優さんって聞かれてぱっと思いつくのが杉咲花さんと高畑充希さんで、演技が好きなはずがお二人とも見た目の雰囲気も似てるなと思いました。

それは置いといて、吉沢亮さんや柄本佑さんは別作品を観て素敵だなと思っていたし、予告等を観た段階で岡山天音さんの"ぽさ"が最高だなと思っていて、キャストに関してはほっとんど心配してなかった。

そして鑑賞後、ノーマークだったぽんちゃんの"ぽんちゃんぽさ"が天才的だったことに感動しました。強い。めっちゃ固めてるやん。ありがてえ。

 

・パラパラ漫画の演出

冒頭からこう来るのか…とニヤけてしまった。演出自体の必要不必要は置いといて、純粋に好きな演出でした。

 

・楓の痛さ

住野先生が「もともと楓のことは嫌いじゃなかったのだけど、映画を観て嫌いになりました(意訳)」みたいなコメントをされていたのだけど、観終わってなるほどと思いました。楓の我が儘さ、自分勝手さが小説よりも強調される脚本だった。

ちょっと話変わるのだが、原作を最初読んだ時は楓のことを嫌なやつとはあまり思えなくて、彼がそういう風に評されているのを聞いてもあまりしっくりこなかったのだけど、映画を観て確信しました。我が儘で、自分勝手で、痛くて、嫌なやつ。

彼の、母親が自分以外のことを相手にしているときの拗ねた子供のような、そういう我が儘さがうまく演出されていて、うまく表現されてるなと思いました。

あと、楓の考えた「なりたい自分になれたら、」ががっつり映像として、その世界線のシーンも撮影してるのが良いなと思いました。より一層"現状"との落差が際立っていて。

 

・原作の好きなところが残っていた。

少し原作を読んだ時の感想も入ってくるのですが、私は秋好のこともぶっちゃけそんなに好きではなくて、初見の時はどちらかと言えば楓側の視点で読んでいたんです(映画観る前にもう一度読んだ時は秋好側で読んだ)。その時にどうしても、秋好の、楓と話してた時に「私のこと好きだったの?」に行きつく思考回路が理解できなかったんですよね。そして私の思う通り、楓も恋愛感情は一切持っていないことを文面から感じ取った。

けれど映画化にあたって、キャストがキャストなこともあり、あそこで恋愛感情持ってるように感じられる演出になってたらとても嫌だなと思っていたのですけど、少なくとも私が観た感じそういったことは感じられなくてとても嬉しかった。

あと、原作での最後の終わり方も好きだったので、映像でもその感じ残してくれてて良かったです。

 

 

◯あんまり好きじゃないところ

・原作の川原さん好きなんですよね

ゆえに出番もヤンキー感も減ってる感じが残念でした。キャストさんも多分、かっこいいよりも綺麗・かわいいで売ってる方なんじゃないかな~。わからんけど。そんな雰囲気がした。

 

・楓があそこまでやるのか、できるのかという疑問

基本全てにおいて原作よりも誇張された表現をされている印象で(これはこの作品だけに限らず、小説原作の実写って基本そういうもんだという偏見を持ってる)、だからこそ楓の痛さも際立っているのだけど、ラストの自分をSNSに載せるというのは、そこまでするかなという印象でした。原作にもなかったシーンじゃないかなぁ…わからんけど…

基本的に楓は弱い人間だと思っていて、自分からああいうリスクを負おうとする人間性には思えなかったんだよな。

まあそれが楓の、秋好に会った、秋好を傷つけたゆえの"成長"なのかもしれないけど。

 

 

◯おわりに

・原作の記憶を消してから観たい

もう一度映画であの衝撃を味わいたい。

それはともかく、最近映画館で観た映画の中では断トツで良作品だったし、原作知ってる作品の映像化の中でも良でした。

 

 

 

 

『宇宙を駆けるよだか』(NETFLIX)

※一部ネタバレ表現があります。ご注意ください。

 

観た日:2020.8.3

 

 

◯はじめに

・前評判のハードルも優に超える

とにっかく前評判が良くて、かつ重岡さん神山さんのお芝居も好きで、富田さんも素敵な女優さんなんだろうなとお昼の番組を観て思っていて、その上でテーマがテーマなだけあり、自身の傷跡にナイフ突き刺されてこじ開けられる可能性もあるよなとも思ってました。そして1話観た時にNot for meな予感…やめてくれ…と思ったものの前評判を信じて観続けました。

めっちゃ良かった…びっくりした…1話を観て思った「こういう結末になるのは嫌だ」「この感情を拾い上げてくれないのは嫌だ」などと思っていたこと、全部がそうはならなかった。物語のわかりやすさを重視した時には捨てられてしまうだろう感情も全部描写されていて、観ていてつらくもあったけど同じだけ救われたような気がした。思い出して泣きそうになってる。

 

◯好きなところ

・悪役なんていない世界

この作品の予告か何かを観た時に、なんとなく美(小日向あゆみ)が善で醜(海根然子)が悪みたいな対比を感じて、それはとても嫌だなと思ったのです。そして、ドラマの1話を観た時もこれを感じた。だからNot for meな予感がしたのだけど、このドラマはそれだけで終わらせることはしなかった。

見た目の美醜よりも、性格の美醜のほうが重要なのかもしれない。この作品での美醜の2人は、見た目だけでなく中身でも同じく美と醜に分けられていた。

こういった作品の典型的なパターンだと、結局見た目が変わっても中身が同じなら変わらないだろ、大事なのは自分の中身がどうあるかなんだよ、という主張だけで終わると思うの。でもこの作品はそうじゃなかった。そこがとても救われたところなのです。

自分は何もしていないのに暴言を吐かれることもあった、見た目が醜いというだけで生きづらさを感じた。そんな日々をずっと送ってきたなら、まっすぐな性格でいられたかなんてわからない。そうやって言ってくれたのが、とても、とても、良い作品だなと思った所以なのです。

見た目の美醜か性格の美醜か。そういったテーマを持って作られた作品は探せば他にもあると思うのだけど、ここまで深く、複雑に、そしてリアルに描いたものはそう無いんじゃないかな。ありがとうございました。

 

・シロちゃん…………

オタク口調で話してしまうことを許してほしい。

火賀にももちろん重めの感情を抱いてしまったことは認めるけど、観終わってしばらくしてからシロちゃんのことを考えていると、ちょっと激重感情が抑えきれなかった。

シロちゃんさあ…どんな感情でずっと動いてたんよほんま…「馬鹿だなあ」にはどれだけの感情が込められていたんだよ…暗闇に入るあゆみちゃんを自分が助けられないことにどれだけ…どれだけさあ…

ヒューマンストーリーとしても、恋愛ドラマとしても楽しめる、そんな作品になっております。

 

・役者さんがすごい

贔屓目が多少あるかもしれないことを最初に断っておく。

何よりも富田さん清原さんの女優陣が最高。表情、仕草、声の出し方で違う人間だってわかる。すごい。一番最後の中身が火賀とシロちゃんになってるところもめっちゃ火賀とシロちゃんでびっくりしちゃった。すごい。

あと冒頭でも話した通り私は重岡さん神山さんのお芝居が最高に好きなんですけどね…あの…良かったっすわ…重岡さんのどこまでも自然体なお芝居。神山さんの丁寧なお芝居。どちらもすごく素敵で、それが一緒に味わえるのとても良き。

あと主題歌のアカツキがドラマ観る前からめっちゃ好きなんですけど、ドラマ観てから聴くとしっかりドラマとリンクさせてて、この歌詞はそういう意味かあ~~!!と新たな発見があったりもしました。

 

◯あんまり好きじゃないところ

・赤月研究

宇金さんと天ヶ瀬さんについてが、なんかふわふわしてたなあという印象。まあドラマの中では「赤月で入れ替わったら元には戻れない」「入れ替わりに関係する人の下にインコがやってくる」とか、ある程度ストーリーの"流れ"に必要なキャラクターという雰囲気がしたから(原作だとまた違うキャラクターぽいけど)あまり深く描く必要はなかったのかもしれない。そこも深く突き詰めようと思えば確実に話数足りないもんね。

観終わった今でこそ、なんかふわふわしてたなという印象は残ってるけど、でも2人とも入れ替わる前のシーンもあったし、決して雑に描かれていたというわけじゃないというのは言っておきます。

 

◯おわりに

・ぜひ観てほしい作品です

絶対に後悔はさせない。とても良かった。観ながらいろんな感情が渦巻くと思う。つらいなと思うこともあると思う。でも絶対に後悔はしない。観てほしいです。

あとNETFLIXに登録した際には『炎の転校生 REBORN』もよろしくお願いします。

 

『追想五断章』(米澤穂信/集英社)

※一部ネタバレ表現があります。ご注意ください。

 

読んだ日:2020.8.11

 

 

◯はじめに

・求めていたのはこれだった

想像以上の良さに驚いた。米澤先生の作品は『愚者のエンドロール』を中学時代に読んだきりだったのだけど、当時どっぷりミステリに浸かっていた私がこの作風を好きにならないわけがなかったんだなと数年越しに気づいた。いうてまあシリーズで読んでたわけでもないのだけど。久しぶりにこの感じ味わったなあ。

短編集とかって触れ込みに惹かれて読もうと思った気がするのだけど、別に短編集ではなかった。故に夜中にやってる自担の冠番組が始まるまでの暇つぶしに読み始めたのだけど、番組始まるまでに読み切れなくて、観終わった後に夜更かしして読了しました。

毎週火曜深夜にTBSさんでやってる「パパジャニWEST」をよろしくお願いします。

 

◯好きなところ

・まず文章が好き

文章が好きなんだと思う。うまく表現できないのだけど、何か引っかかるわけでもなく、とても感心するわけでもなく、でも「これ好きだな」って思う文章をしている。読みやすいと言うべきなのかな。「はじめに」で言った通り短編集だと思って表紙開いたから、短編集じゃなかったことに(お?)と思いはすれど、それ以外の取っ掛かりもなくただただ好きなやつだと思った。

本編の文章も好きなのだけど、叶黒白の文章が特に好きで、もっと言うなら北里参吾の言葉がとても好きなんですよ。彼のキャラクターがあって、ゆえに叶黒白の小説がかくあるという、その流れがしっかりしている。やっぱり諧謔を楽しむキャラクターが好きなんだな。私はな。オタクだからな。

私は小説を言葉として読めないので、特にこの表現めっちゃ好きとかがない限りあまり文章表現に言及はしないのだが、この作品における「この表現めっちゃ好き」はたぶん叶黒白及び北里参吾の文章なのだと思う。好きです。

 

・ミステリとしてしっかりしている

私がミステリをがっつり読んでいたのは本の沼に浸かりたての頃で、最近はあまり読まなくなっていたのだけど、久しぶりに読んで改めてミステリってこうだよな、みたいなある種の爽快感を得た。

近頃読んだことのあるミステリは、謎解きに重きを置きすぎたものか、青春小説であることにこだわったものか、あるいはどっちつかずで中途半端なものばかりだったので、とても久しぶりにがっつりミステリを読んだ気がした。

謎解きに重きを置きすぎて人々の相関図や周囲の環境等を軽視することはなく、しかし読みながら読者自身が叶黒白の掌編の意味や、冒頭の夢の意味を推理することができる。推理できるだけの材料が散りばめられている。読み進めるうちに徐々に真相に感づいていって、最後の結末が突飛すぎることもなく、読了後に納得と爽快感を得ることができる。何度も言うようだけどやっぱり、ミステリってこうだよなぁ~~~!!!!!とニヤけてしまう作品でした。

 

◯あんまり好きじゃないところ

・特になし

いろいろ考えたけど特になかった。

以下はただの戯言なので聞き流していただいて構わないのだが、謎解きが好きな人間として、謎解きという観点から話をするなら、各掌編と結末の1行がどっかの章に全部まとめて載ってたら推理も楽だったのになぁ~と思いました。まあそれなら小説である意味が破綻するので、そうやって出されてたとしたら逆に(いや謎解きに依りすぎやろ…)て不満を言ったと思う。

本当に、いろいろこねて考えてもこの程度の好きじゃなさしか出て来なかったです。とても良いものを読んだ。

 

◯おわりに

・以上は久しぶりにミステリを読んだ人間の感想であるからし

ミステリをずっと好きで読んでるみたいな人がこのブログ読んだら、なんか大層な感想やなと思うのかもしれないけれど、普段あまりミステリに触れない人にはとっても良いと思う。あと小説が好きな人。小説による謎解きだったからより楽しめたのかもしれないな。

しかしまあ、良いものを読んだ。ありがとうございました。