成瀬が感想を綴るブログ

様々な作品の感想を綴るだけのブログ。

『窮鼠はチーズの夢を見る』(2020年)

※ネタバレ表現があります。ご注意ください。

 

観た日:2020.10.11

 

 

◯はじめに

・想像以上に濡れ場が多い

最初の濡れ場で周りがめっちゃざわついて面白かった。

これR-15なんだな……R-18でもいい気がするけど、モロじゃないからかな。

原作未読です。以下綴る内容には、原作の中の表現を踏襲したものも多くあると思いますが、あくまで映画を観た感想として述べますね。

 

◯好きなところ

成田凌とかいう役者

なにあれ?(?)

決して表情が大きく変わる役じゃないのに、視線の向きとか動かし方とか、目元の筋肉の緊張とか、口元も軽く口角上げたりちょっとキュッとすぼめたりするぐらいしかしないのに、表情だけが抜かれてるシーンでも、動揺怒り喜び悲しみ全部感じ取れた。なに。すごいなあ。

あと、前にたまたま見たインタビューで、「目元が濡れてる感じを意識した」っておっしゃってたのだけど、めっちゃわかった。濡れてた。作品自体が全体的に湿度高めでしっとりしてるんだけど、今ヶ瀬の瞳が濡れてなかったらもっとさっぱりした印象になりそう。

主人公は恭一だとしても、作品の中心にいるのは今ヶ瀬だなあと思った。

 

・恭一のクズっぷりが素敵

もともと大倉くんのジャニウェブ読んで興味持ったのだけど、まさかここまでクズな役だとは思ってなかった。

目に見えてというか、100人が100人クズだっていう印象を抱くかどうかは微妙、みたいな地味なクズっぷり(?)が一貫してたなという印象。

自分のことしか頭になくて、愛されたいと思っていて、愛してくれる人が好きで、それが当たり前だと思っている。とことんクズなんだなあと思った。

カーテン届いたの先週って言ったあたりがすごく好きでした。心が離れ始めてるってのもあったとは思うけど、それにしても言うんだ……みたいな。直接的な誤魔化し(浮気疑われてるから出かけて機嫌とろう、とか)はしても、こういう細かいところは雑よな、と思う。

あと北京ダック食べに行くシーンで、なんか楽し気に肩組んでたのに女性二人とすれ違ってなんか見られてそう、って思ったときにスッと腕外すのがめっちゃさりげなくて、だからこそリアルで、作りこみが細けえ!!!!と思った。

エンディングも、恭一だけが1人でちょっとスッキリしてるんだよな。いろんな人を悲しませたことは頭にないみたいに。頭の中は覗けんから実際のところは知らんけどさ。

結局今ヶ瀬が「戻ってくる」ことを待つんだよね恭一は。自分から会いにとか、探しにとか、自分から行動は起こさない。今ヶ瀬が姿を消した理由を考えないで。今ヶ瀬の愛を信じて疑わないくせに、今ヶ瀬の愛を知ろうとはしない。自分勝手な人だよなあ。

まああの後今ヶ瀬も戻ってきそうではあるけどね。

恭一は本当に、1人で勝手に苦しんでいるだけなんだな。そんで1人で勝手にスッキリする。とても、人間味のあるキャラクターだなと思いました。

ただ彼の名誉のために言うと(?)、恋愛面以外での恭一は結構しっかりしたというか、頼りがいがあって周りに好かれる人なんだろうなと思いました。「(今ヶ瀬が)傷つくところを見たくない」というのも、彼(ら)に向けられる偏見が嫌だという気持ちありきなのだろうし。それが今ヶ瀬と関係を持ったから、なのかはわからんけど。

まあそのわりには「普通の男」って連発するからどっちにしろなのかもしれん。

 

・伏線回収と言うか、過去との対比というか

表現が難しい!!!!!

一番わかりやすいのは、最初の寿司屋で「普通の男なら~」みたいなセリフがあって、そのあと夏生さんと三つ巴のところで「普通の男には無理だよ」みたいなセリフがあったの。うわーーーーーーと思った(急に低下する語彙力)。

あと個人的にようできてる、と思ったのが濡れ場での上下(上下?体位?)。最初は今ヶ瀬が上で求めてたのが、後半の濡れ場は恭一が上になって求めてたんだよね。それが、実際の心の動きと言うか、最初は今ヶ瀬のほうが恭一のことを好きでグイグイいってたのが、だんだん恭一が今ヶ瀬から離れがたくなってる、みたいな。うまいこと表してんな~~~と思って好きでした。

あと考察がはかどると思ったシーンが、たまきちゃんが恭一のスウェット着てカウンターチェア座ったときに、自分のところに呼んで降りさせたところ。

あそこで今ヶ瀬の存在がよぎったのは視聴者側としても理解できるところだけど、それがどのような感情でよぎったのかによってだいぶ変わるなと思って。

例えば、たまきちゃんが今ヶ瀬と同じ行動を取ることによって、今ヶ瀬のことを思い出してしまうのが嫌だったのか、あるいは「その行動を取っていた人物」として記憶に残るのが今ヶ瀬じゃなくなってしまうのが嫌だったのか。今ヶ瀬の場所を残しておきたかったのか。どっちなのかによってだいぶ変わると思うんだな。もちろん両方の思いが複雑に絡んだ結果かもしれないけど。

なんか、そういう過去のシーンとの対比みたいなのが個人的にものすごく好きです。

 

・全体的に美術とか演出とか本当に好みでした

映画観てる時に美術とかセットとかって(そういうの詳しくないのもあって)あんまり注目してなかったんだけど、最近色彩検定の勉強始めたからなのか色味とか部屋の中とかすごく気になっちゃった。とても素敵でした。

特に今ヶ瀬と恭一の部屋の対比が色味でも置いてるものでも強調されてて。

今ヶ瀬の部屋は暖色系の暗めのライトで、植物とか木でできた感じの机と椅子みたいな(細かいとこ覚えてないからなんとなくの雰囲気)、全体的にウッディでエキゾチックな、湿度高めな雰囲気の部屋だった。

対して恭一の部屋は、コンクリ打ちっぱなしで色味が少なくて無機質な感じ。思えば唯一暖色で木っぽさがあったのがカウンターチェアだなあ。たぶん。そこも意識してたのならとてもすごい。

いろんなところで作りこまれてるなって感じる作品だったなあ。それが厭味ったらしいわけでも鬱陶しいわけでもなく、自然。素敵。今思い返しても好きなのが三つ巴の時のビールですね。良かった。にやけちゃった。

 

・女性のキャスティングも良かった

知佳子さんとかたまきちゃんとか、「恭一の好み」がわかりやすいキャスティングをされてて、だからこそ夏生さんがちょっと異質なんだよね。たぶん原作を踏まえているのだと思いたいんだけど、夏生さんはそこまで恭一のタイプって感じがしなくて。いろいろ想像が膨らんでおもしろかった。

 

◯あんまり好きじゃないところ

ステレオタイプなゲイ像がな~

恭一がクラブ行ったときに、カウンターとかでお酒飲みながら話してた人たちが全員ステレオタイプ!て感じがしてどうなんだろうと思ったりとか。いやでもそういうとこ行ったことないし実際あんな感じなのかもしれないけど、それにしてもカメラがどこに向いても同じだなあって。まあ大学生もみんな同じような感じだもんな…そういうことかな…(違)

ただ奥で踊ってた人とか、恭一にハンカチ差し出した人とかはまたちょっと違ってて、ん~~~~て感じ。んん、わからん。ただあんまり好きなものではなかったです。

 

・「なんだそれ」多ない?

なんかどっかのシーンで恭一がめっちゃ「なんだそれ」「なんだよそれ」って言うなーと思って意識して聞いてたんだけど、十数分ぐらいのシーンで5回ぐらい言ってた気がする。ちょっと盛ったけど。体感そんな感じ(?)。

そういう返し(似たような返し)ばっかりする、という一種のキャラ付けというか、そういうのなのかな。恭一の中でいくつかの「相槌パターン」があって、その中から選んで会話してる、みたいな。基本他人に興味がないから、どんな話だとしても一定の返事をする、みたいな。そう考えると面白いんだけど、観てる最中はめっちゃ言うなーって思ってました。

 

 

◯おわりに

・1時間のドラマ1クール分ぐらいの密度

いやほんと観終わった後に、あれ、ドラマ観てたのかな?一挙放送かな?みたいな気持ちになった。びっくりしちゃった。

時系列というか、展開は結構速くポンポンと進んでいくのだけど、全体的な雰囲気としては疾走感とかよりも断然ゆったりしっとり生々しい、みたいな感じなので、「いや急に時間飛ぶやん」みたいな気持ちにもならずに気が付けば遠い場所に来てる。(?)

映画としてもちょっと長めなのかな。わからんけど。でもほんとにぎゅっとしてて、でも内容が薄く感じることもなくて、本当に濃密な時間でした。

タイトル聞いた段階では、なんとなく窮鼠は今ヶ瀬かな、と思っていたのだけど、窮鼠は恭一のことなのかもな。いや、ふたりともを指してるのかも。

いやーーーーー映画には関係ないことなんだけど、観る直前にいろいろあって、でもチケット先に買ってたから観る以外選択肢はなくて、やっぱ買わなきゃよかったかなーーーとか思ってたのだけど、観てよかったわ。本当に。素敵な作品でした。

 

 

 

 

 

 

あとこれ見かける度に言うことにするけど、上映中はスマホの電源切ろうな。マナーモードでも音めっちゃ聞こえるからな。やべ!と思ったのか純粋に通知気になったのかそのあとスマホ開いてたよな。目の端に見えたからな。気が散るんだわ。やめてな。映画館は家じゃないからな。

あとエンドロール直前ぐらいでスマホ見てた人もいたな。やめてな。エンドロールの時もやめてな。興味ないなら先に外出なな。端に座ってりゃそそくさと出られるでしょう。マナー守ろうな。