成瀬が感想を綴るブログ

様々な作品の感想を綴るだけのブログ。

『赤すぎて、黒』(劇団時間制作)

※一部ネタバレ表現があります。未観劇の方はご注意ください

 

観た日:2020.3.12(Aチーム)

 

 

◯はじめに

マスクの中にバスタオル仕込んどきたい。

観劇後はマスクの中びしゃびしゃのぐしょぐしょでとても汚い感じになっていた。上演中にあんまり動くと目障りだろうから、なるべく暗転中に涙拭いて鼻すするようにしてたんだがそれじゃ間に合わないよね!!!!知ってた。

こう見えて(?)舞台観劇歴は短い私ですがその中でもリピートしてる劇団の1つが時間制作さんです。好き。好きが故にどう感想を書けばいいかずっと悩んでいたのだけど、どう頑張っても上手いこと言葉にできないので簡潔にしました。

 

 

◯好きなところ

・あって、なかっただけ

あった家族となかった家族のお話。彼らの価値観は共存できないのか。

谷さんの脚本の好きなところは、善悪だったり白黒だったりをはっきりと決められないところなんですよ。もちろんあっちが悪いこっちが悪いとかって感想持つ人もいると思うんだけど、でもたとえどちらかが「黒」だったとしても黒になるまでの人生があって、その人生を鑑みずに「あいつは黒だから」っていう評価を下すのはとても悲しいことだと思う。谷さんはそういう「黒が黒になるまでの人生」を描いた上でその人をどう思うかってのを観客に問うているというか、使い古されてボロボロの言葉だけど「考えさせられる」お話を書いてくださるんだよな。

全く違うコンテンツの話で「戦争は正義と正義のぶつかり合い」って台詞があるんですけど、それとやっぱり似ていて、彼らの中に悪はいなくて、どちらかが正義でどちらかが悪だと感じるならその人はどちらか一方に立っているんだよ。そして、もう一方も同じことを思ってる。でもそれは第三者からしたらどちらも悪で、あるいはどちらも正義なんだと思う。

今回のお話に出てきた家族は、どちらも悪と断罪すべきではない。と思う。私は今回のお話でまいまいがとても嫌いだったのだけど、でもまいまいの行動を否定はできないし私も彼女と同じ立場に立ったら同じことをするんだと思う。

個人的に優美さんがとても、優しくて強い方だなと思ったんですよ。だって寛治に乱暴されたことに対して、彼自身を否定してる雰囲気がなかったから。普通あんなことあったら叫んで怖がってやばい奴って非難するだろうに、彼自身を否定はせず、けれど彼らとは生きていけないとちゃんと自分たちのことも考えてる。それがなんか、強いなあと思って。

彼らの価値観は共存できないのか。自らの生きる場所を探して彷徨っていたあの家族を「可哀想」という言葉に閉じ込めるのは悪ではないのか。

きっとこの答えは、高校生たちが見つけてくれるんだろうなあ。安藤お前いい奴だよ…最後ボロッボロに泣いて劇団の方々がご挨拶してるのちゃんと見れずにずっと涙拭いてた。申し訳ねえ。

 

・キャストさんがやっぱり最高

いつもの方々からそうじゃない方々までほんとに最高。なん、なに?

はらさんがすごい好きなんですよ…今回すごいハマってたなー。野村さんもとても好きだった。最後家族で朝食食べるときの、あの絶妙な寛治感(寛治感とは?)がすごい、空気和らげてくれたんだよなー。

竹石さんは、前作の「ほしい」でこの役シングルなのキツすぎない???と思ってたんだけど今回も今回で違う意味でキツそうだなあと思った。いやでもシングルの方基本みんなキツくない???大丈夫???て感じだな。すごい。お疲れ様です。

 

・2つの家があった

セットの話なんですけど今回もすごかったな…初めて時間制作さん観たときの感想「舞台の上に階段ある!!!!」だもんな。今回は席が自由席だったら絶対選ばないだろう前の方になってしまって上階をちゃんと観れなかったの心残りなんですけど、近い分表情ちゃんと観れてこれもこれでアリだなと思った。

あと私舞台上で煙草吸うタイプのお芝居すげえ好きなんですよ…これはただの趣味なんですけど…嫌煙家が蔓延る中批判も出てきそうだけど、キャラ付けとしても煙草って良いアイテムなんだよね。とても好き。

 

◯あんまり好きじゃないところ

・ほとんどない

ほとんどないんだけど一瞬置きにいったか…?て台詞があったな。そこだけ家に帰ってきて買った台本読みつつそういやここ…て思っただけで全然ほんとに好きじゃないとか違和感があったとかそういうわけじゃないんだけど、こういうのって否定すればするほどリアルだからやめとこうか!!!!!!あとさっきも言ったけど席が前だったなというだけ。これは自分の運とタイミングを呪うしかない。

 

 

 

◯おわりに

上演してくれてありがとう

公演中止が義務では???みてえなよくわからん同調圧力に屈せず上演してくださってありがとうございます…今回は手持ちあったから台本も買えてほくほくだぜ…

きっとどこかにこの家族はいるんだと思う。生きる場所を探して、探して、探した先で否定されて、心を殺さなきゃ生きていけない人が、そんな家族がいるんだと思う。

決してフィクションの中にこの感情を置いていくべきではない。「今まで見て見ぬふりをしていた人間の価値観」を、フィクションの中だけに留まらせておくべきではない。この舞台を観劇した人が現実に戻って、いつか違う価値観に出会ったときに、この家族をちょっとでも思い出したらいいなと、いち観客の私は思うのであった。完。