成瀬が感想を綴るブログ

様々な作品の感想を綴るだけのブログ。

『教団X』(中村文則/集英社文庫)

※一部ネタバレが含まれます。未読の方はご注意ください。

 

読んだ日:2020.2.15

 

◯はじめに

読書開始30分後の私「なんだこれは???????」

ちょっとよくわからない(褒めてる)。数ヶ月積読してたけどようやく時間と覚悟ができたからさあ読むぞ!とおやつとコーヒーを用意して万全の態勢で挑んだら今までになく濃い中村文則の世界にいた。私はいつからここにいたんだろう。

 

◯好きなところ

・圧倒的中村文則

ハァーーーーーーー意味わからん好き。文字と映像が押し寄せてきて人の深い黒い感情の波が襲ってくる。孤独、絶望、苦しみ、悲しみ、快楽、虚無、愛情、憎悪。いろんな感情を煮詰めてどろっどろにして仕上げにギャグを少々入れましたって感じ。好きだ。

 

・読む宗教じゃん

読む宗教ってなんだよって思った人いると思うけど私も同じこと思ってる。

松尾さんの話を聞きながら(確かに聞いていた)納得して感心する自分がいたので途中で現実に戻った時にあれ、これ私ちょっとやばいのでは?と恐怖を感じました。

あと全部読み終わって風呂入って洗い物してベッドに入って寝るまでの数時間、ふとした瞬間に"私という意識"を意識させられて確実にこれまでと同じ思考ではいられないと思いました。

今私の考えたことは私の意思ではなくて私は私ではなくて存在しなくてみたいな思考を持つ人間にさせられてしまう。これから読む人は覚悟を持って読んでほしい。

 

・第一部と第二部はそうなるべくしてなってる

前半の第一部、本当にすごい(小並感)

あれ、私いま論文読んでんのかな???て思うぐらい、科学とか宗教とかいろんな知識が凝縮されてていち小説の所業じゃない。なにこれ。たぶん中村文則が小説家ではなく宗教家だったら国に影響を及ぼすレベルの宗教になってた気がするので小説家になってくれて本当によかった。

からの後半の第二部。決して現実感がないとは言わない、事実明日テレビで流れる可能性はあるよなと思ってしまった程度には今の日本の問題を如実にしたテロだと思った。ここでもやっぱり歴史とか政治とかの知識がいっぱい出てきて何この著者怖いって思った。

で、ここで言いたいのは第一部と第二部が明確に異なってるという所。第一部最後にキーとなるポイントがあってなるほどここで変わるとかと思ったんだけど、そのあと第二部に入って雰囲気がガラッと変わった。気がした。

例え下手な私が例えるとするなら、第一部は日常アニメを観ている感じで、第二部はアクション映画を観ているような感じ。(ちなみに私は小説の内容が映像で流れるタイプ)

第一部は確かに私も広い庭で松尾さんの話を聞いていたんだけど、第二部はスクリーン越しに場面を観ているような雰囲気があった。緊迫感ありすぎて第二部は気づかずに息を止めて読んでたから、これから読む人は意識して呼吸をしながら読んでほしい。死ぬから。私は途中でお香を焚いて精神を落ち着かせてた。

手に汗握るが読んで字の如く、という内容。文庫本なせいもあるのか読み終わった時本が歪んでてどれだけ手に力入れてたんや…て思った。とにかく読むのに、かつ読み終わるのに覚悟と気合が必要。

 

◯あんまり好きじゃないところ

・読了まで7時間

なっっっっっっっっっがい!!!!!!!!!

私がずっと積読してた理由の1つがこれ。時間かかるだろうなとは思ったけど7時間は予想してなかった。長くても5時間かなと思ってた。1冊を何回かに分けて読むのがとても嫌いなので1回で読み終わりたかったの。ふと時計見てもう3時間経ったなーって本に視線移したらまだ半分も読めてなくて絶望した。

でもこれは私が遅読かつ小説読むの数ヶ月ぶりだったのが原因だと思うから読むの遅くない人は5時間とかで読み終わるんじゃないかな。たぶん。

 

・論文読むの苦手なんだ

前述したとおり前半は本当に論文か????ていう内容。そして私は小説以外の文章を読むのが苦手。

なので途中内容が頭に入ってこなかった時もある。たまに戻って読み直しつつちゃんと頭に入れたけど。

ただ今回はもともと宗教とか神話に興味があったり宇宙の始まりに疑問を持ってたりしたので比較的眠たくならずに読めた。たぶん科学とか理系の話がもっと多いとより頭に入ってなかった。

 

◯おわりに

まさしく著者の最高傑作。

中村文則先生の世界観を軽く味わいたいなという人には『惑いの森』、どっぷり浸かりたいなという人には『教団X』をおすすめする。

ただこれはとにかく長いので時間と精神の余裕がある時に読んだほうがいい。心と脳を休める用の甘いものとかあるとより良いかも。

何も知らない状態でこの作品に触れられる人を羨ましく感じるな。私も1回記憶を消したい。そしてまた読みたい。