『エレファント・マン』(1981年)
※一部ネタバレ表現があります。ご注意ください。
観た日:2020.7.13
◯はじめに
推しくんが舞台で主演やると聞いて。
ストーリー調べたらおもしろそうだし、ちょうど4K修復版が公開されるとのことで少し遠い映画館まで観に行った。特殊メイクなしでどうやって演じるんだろうな…
◯好きなところ
・モノクロならではの演出
これはこの作品に限った話ではないと思うけど、今回観て初めてそういうことか、と気づいたので書いとくね。
モノクロだから、色味とか光加減とかで時間軸を表現できないんだよね。だからこそナースが世話をしているところから、彼女たちが光(火)を落として仕事を終えて、ナースがいなくなったベッドルームを映す、かつ時計の鐘を鳴らすことで夜を告げるってのがなるほどなあ、と思った。昔ならいや今のシーンいらんかったやろ…と思うところだったな。新発見をありがとう。
・取り上げるテーマ
観終わった後に考えに浸れるような作品が好きなので、これは良いのでは!と思ったんだよなあ。映画版は特殊メイクがっつり、とはいえそれだけで挙動が全部変わるわけではないと思うので、あれだけ演じられる役者さんすごいなあと思った。
あと実話をもとにしているというのにも惹かれて、事前にモデルになった方を調べていたのでそれゆえに以下に記すような感想を抱くことにもなったのかもしれない。知らんけど。
◯あんまり好きじゃないところ
・感動ポルノみを感じた
時代が時代だということ、そして決して「差別をなくそう運動」のような作品ではないということは知っているけれど、それにしてもジョン・メリックの感情が偏りすぎかなと思った。感情的になるシーンが駅で叫ぶところしか感じ取れなくて、それ以外で感激して泣くシーンはあっても、それは心優しい人間、あるいは"かわいそう"な人間を演出するためのものなんだよなって感じ。
あくまで私の意見ということを前提としてほしいのだけど、私はこの映画で感動・感激・感涙はしたくないなと思った。叫んだシーンは少しホロっとしたけど、思ってた以上に泣かなかったな。絶対べっしゃべしゃになる…と思って観に行ったんだけどな。
あえてこの表現を(わかりやすさも兼ねて)使うけど、障がい者を神聖視するところがとても好きじゃないです。やはりここで描かれている彼はどこまでも見世物であったし、怒りに近い感情を抱くことももっとたくさんあっただろうに、優しい医師に救われて感激してその想いのまま亡くなりました、良い話だね、で終わった感があって嫌だなあ。そして今もこうして映画のモチーフとして見世物であるところもあまりにも皮肉ですね。
女優さんやジョン・メリックの感情が表情だけでは掴みづらいところもあって、私が捉え間違えている感情もあると思うから一概には言えないんだろうなあ。でも初見での意見は以上の通りです。
◯おわりに
思ってた以上におもてたんと違った。
まあぶっちゃけ古い映画だと価値観とか合わなくて楽しく観れないこと多いので、今回も恐る恐るではあったのだけど、それでもいつもより期待はしていたからちょっとおもてたんと違ったな。
前評判で「悲しい映画」という表現があったのだけど、もしこれが感動ポルノ的であることを含めてこう言っているのならとても面白いなと思った。
リアルを劇的にするという意味では確かに劇的なのだろうけど、やっぱりこれじゃないんだよなあ。Not for meでした。